答え

  1. リズム
    幅の広くないQRS波が先行するP波を伴ってほぼ規則正しく打っていますが、3拍目と6拍目、胸部誘導に切り替わった3拍目は早いタイミングで出ており、期外収縮と考えられます。これらのうち、3拍目のQRSは幅が広くなく他のQRSと同じ形で、先行するP波を伴っていますから、心房(上室)期外収縮と診断します。後の2つはQRSの幅が広く、先行するP波を伴っていないことから、心室期外収縮と診断します。規則正しく打っている部分のP波は I、II、aVFで陽性ですから、基本調律は正常洞調律。心拍数は約80/分くらいでしょうか。
  2. P
    II 誘導のP波は、幅が2目盛半(0.10秒)あまりとやや広めですが、V1のP波には明らかな陰性部分がないので左房負荷とはとりません。また、II 誘導のP波の高さは2目盛(0.20mV)ほどですから、右房負荷もなさそうです。
  3. PQ
    PQ間隔はII誘導では4目盛半(0.18秒)ほど、胸部誘導(特にV3~V6)では4目盛(0.16秒)弱のようです。3~5目盛(0.12~0.20秒)の範囲内ですから、房室伝導は正常です。
  4. QRS
    先行するP波を伴っているQRS波は、幅が約2目盛半(0.10秒)で正常範囲内。aVR誘導以外では、IIIでごく小さなQ波を認める程度で、異常Q波はありません。また、V3~V6 では他の誘導に比べてQRS波の立ち上がりがなだらかになっていて、このために肢誘導に比べてPQ時間が少し短くなっているようです。この立ち上がりのなだらかな波形はデルタ波と考えられ、WPW症候群が疑われます。胸部誘導でR波はV1→V3の順に徐々に高くなっていて、S波はV3→V6の順に浅くなっています。I のS波の深さとV5のR波の高さの和(SV1+RV5)は、19+14=33mm(3.3mV)くらいですから、左室肥大はありません。
  5. Axis
    肢誘導でR波とS波の大きさの差が最も少ないのはIIIとaVL誘導ですから、おおよその電気軸は+45度。
  6. ST-T
    明らかなST-T異常はなさそうです。
  7. QT時間の延長もなさそうです。

    ということで今回の心電図は、心房(上室)期外収縮+ 心室期外収縮 + WPW症候群 という診断になります。

    WPW症候群が隠れているのがわかりましたか? デルタ波が大きくない上に、他に2種の期外収縮が出ているので見逃されやすいのですが、肢誘導と胸部誘導のPQ時間の差にさえ気づけば見えてくるはずです。ちなみに3拍目の心房期外収縮の波形をよく見ると、他の心拍に比べてPQ時間がやや短めで、特に I、II誘導ではQRS波の立ち上がりがよりなだらかになっている(デルタ波)のが判ります。また、今回の心電図波形は I、III、aVL誘導で基線が少し毛羽立っており、左手電極の接触不良または断線が疑われます。こういう波形が出た場合には、その場で電極の確認をして、きれいな波形も追加記録しておきたいものです。すべての所見を拾うことができましたか?