答え

  1. リズム
    幅の狭い QRS 波が先行する P 波を伴わず不規則に打っています。RR 間隔が全く不規則で P 波が判然としていませんから、この段階で心房細動と診断してまず間違いありません。胸部肢誘導に切り替わって 4 拍目の波形は幅が広く、早いタイミングで割り込んできているようですから、心室性期外収縮と診断します。心拍数は平均すると 55 / 分前後 ( 9 拍 / 10 秒× 60 = 54 )。
  2. P
    ハッキリした P 波はありませんから所見を拾うことはできません。
  3. PQ
    P 波がないので読めません。
  4. QRS
    QRS 波は(胸部誘導の 4 拍目を除き)幅が約 2 目盛( 0.08 秒)。aVR 誘導以外では、明らかな Q 波を認めず、異常 Q 波はありません。胸部誘導で、R 波は V1 ~ V3 の順に高くなっていて、S 波は V4 ~ V6 にかけて徐々に浅くなっています。V1 の S 波の深さと V5 の R 波の高さの和( SV1 + RV5 )は心拍によって多少差はありますが 3 + 11 = 14 ( 1.4mV )ですから、左室肥大はありません。
  5. Axis
    肢誘導の QRS 波で、上向きと下向きの成分の大きさの差が最も少ないのは aVF 誘導ですから、おおよその電気軸は± 0 度。
  6. ST-T
    明らかな ST-T 異常はなさそうです。
  7. QT
    QT 時間の延長もなさそうです。

    ということで、今回の心電図は心房細動+心室性期外収縮という診断になります。心房細動の診断は、“RR 間隔が絶対不整で P 波がハッキリしない”という事にさえ気付けば難しくありません。心房細動の途中で見られる心室性期外収縮については、変行伝導との鑑別が問題となりますが、今回の心電図のように記録が短くて(情報が少なくて)鑑別困難な場合には、心室性期外収縮と診断しておきます。