答え
- リズム
幅の広い QRS 波が先行する P 波を伴ってほぼ規則正しく打っていますが、胸部誘導に切り替わって 3 拍目の波形は予定より早いタイミングで割り込んできているようです。この心拍は早いタイミングで(早期性をもって)出ていることから期外収縮と考えられ、幅が広く先行する P 波を伴っていないことから心室性期外収縮と診断します。
P 波は I、II、aVF 誘導で陽性ですから、基本調律は正常洞調律で心拍数は約 60 / 分。 - P
II 誘導で P 波の幅は約 2 目盛半( 0.10 秒)と僅かに広めですが、V1 誘導で陰性成分がハッキリしないため左房負荷とはとりません。また、II 誘導の P 波の高さは 2 目盛( 0.20mV )弱ですから、右房負荷もありません。 - PQ
PQ 間隔は約 5 目盛( 0.20 秒)ですから房室伝導は正常上限。 - QRS
規則正しく打っている QRS 波は幅が約 4 目盛( 0.16 秒)と正常の上限をかなり超えており、心室が正常の刺激伝導系を介さない興奮をしていると考えられます。よく見ると、 QRS 波の始まる部分にスパイク状の波形を伴っていますから、心室ペーシングによる心拍と診断します。また、このペーシングされた QRS 波とそれに先行する P 波が一定の PQ 間隔で出ていることから、ペースメーカーが正常洞調律の心房興奮を検出してそれに同期した心室ペーシングを行っているもの(心房同期心室ペーシング)と判断します。
心室ペーシングのため、この波形から左室肥大や右室肥大の有無は読めません。 - Axis
肢誘導のQRS波で、上向きと下向きの成分の大きさの差が最も少ないのはIとaVL誘導ですから、おおよその電気軸は+ 75 度。
心室ペーシングなので電気軸の値に診断的意義はありませんが、万一心室の中でペーシング電極が動いてしまうと電気軸が変わりますから、元々どれくらいの電気軸だったかを記録しておくと役立ちます。
今回の心電図は、QRS 幅が正常上限を超えていることから、心室が異常興奮(正常の刺激伝導系を逸脱した興奮)をしていると考えられますので、ST-T や QT に関しては所見を拾っても意味がありません。
ということで、今回の心電図は心室性期外収縮+心室ペーシング(心房同期心室ペーシング)という診断になります。
今回の心電図は、幅の広い QRS 波が並んでいる上に不規則な部分もありますから、波形を見慣れていない人にとっては、とっつきにくい心電図だったかもしれません。しかし、記録された波形の所見を基本に忠実に拾っていけば診断がつくはずです。苦手意識を持たず、コツコツ所見を拾ってみるようにしてください。