答え

  1. リズム
    幅の狭い QRS 波が、先行する P 波を伴って規則正しく打っています。P 波は I、II、aVF で陽性ですから正常の洞結節からの調律と考えられます。心拍数は 100 / 分弱。
  2. P
    II 誘導で P 波の幅は約 2 目盛半( 0.10 秒)とやや広めで、V1 の P 波をみると±の二相性でほとんどがマイナスの成分になっていますから左房負荷と診断します。また、 II 誘導の P 波の高さは約 3 目盛半( 0.35mV )と高く、右房負荷もあると考えられます。
  3. PQ
    PQ 間隔は約 4 目盛半( 0.18 秒)ですから、房室伝導は正常。
  4. QRS
    QRS 波は幅が 2 目盛( 0.08 秒)あまりで正常範囲内。aVR 誘導以外には Q 波がなく、異常 Q 波はありません。胸部誘導では V1、V2 の波形が rR’ 型になっています。右側胸部誘導( V1 ~ V2 )の QRS 波の後半に見られる R´ 波は、収縮期後半に電極に近づいてくる心室興奮があることを意味しますから、右心室の興奮が遅れている(右脚ブロック)と考えなければなりません。しかし、QRS の幅は完全右脚ブロックのように広がっていませんから、不完全右脚ブロックと診断します。
    R 波は V1 ~ V3 にかけて徐々に高くなっていて、S 波は V4 ~ V6 にかけて徐々に浅くなっています。V1 の S 波の深さと V5 の R 波の高さの和( SV1 + RV5 )は 10 + 5 = 15 ( 1.5mV )ですから左室肥大はありません。
  5. Axis
    肢誘導の QRS 波で、上向きと下向きの成分の大きさの差が最も少ないのは aVR 誘導で、I 誘導の QRS 波が下向きですから、おおよその電気軸は + 120 度、極端な右軸偏位ということで、左脚後枝ブロックと診断します。
  6. ST-T明らかな ST-T 異常は認めません。
  7. QTQT 時間の延長もなさそうです。

ということで今回の心電図は、左右両心房負荷+不完全右脚ブロック+左脚後枝ブロックという診断になります。

不完全右脚ブロックはよくある心電図異常で、多くの場合は問題がなく、検査や治療の対象にはなりません。しかし、この心電図のように明らかな左右の心房負荷や右軸偏位の所見を伴っている場合には、心房中隔欠損などの先天性心疾患の存在を疑い、慎重に診察や検査を行わなくてはなりません。