答え

  1. リズム
    幅の広い QRS 波が先行する P 波を伴って規則正しく打っています。胸部誘導に切り替わって 4 拍目の QRS 波は少し早いタイミングで出ているようです。この QRS 波ですが、よく見るとその 4 目盛( 0.16 秒)ほど手前に先行する P 波を伴っていますから、心房性(上室性)期外収縮と診断します。規則正しく打っている部分の P 波は I、II、aVF で陽性ですから基本調律は正常洞調律、心拍数は 75 / 分前後です。
  2. P
    II 誘導の P 波は幅が約 2 目盛半( 0.10 秒)あまりとやや広めで、V1 の P 波をみると±の二相性を呈しており、後半にしっかり陰性の波形を伴っていますから、左房負荷 と診断します。II 誘導の P 波の高さは約 1 目盛半( 0.15mV )ですから、右房負荷はありません。
  3. PQ
    PQ 時間は 4 目盛( 0.16 秒)あまりですから房室伝導は正常。
  4. QRS
    QRS 波は幅が 3 目盛半( 0.14 秒)と正常上限の 2 目盛半( 0.10 秒)より広くなっています。QRS 幅が広くなっているという事から、心室が(正常の刺激伝導系を逸脱した)異常興奮をしていると考えられます。そこで右側胸部誘導の QRS 波を見ると、V1 が QS 型、V2 、V3 が small R deep S パターンを呈しており、この S 波のために QRS 幅が広くなっているようです。この S 波は V1 の電極から離れて行くゆっくりした左室の興奮と考えられますから、完全左脚ブロックと診断します。正常なら心室中隔の興奮によってできる右側胸部誘導の R 波はほとんどなく、また左側胸部誘導( V5 ~ V6 )で見られることの多い Q 波もありません。
  5. Axis
    肢誘導の QRS 波で、上向きと下向きの成分の大きさの差が最も少ないのは III と aVF 誘導ですから、おおよその電気軸は +15 度。

今回の心電図も、QRS 幅が正常上限を超えていることから心室の興奮が異常(正常の刺激伝導系を逸脱した興奮)と判断できますので、ST-T や QT に関しては所見を拾ってもほとんど意味がありません。

ということで、今回の心電図の診断は 心房性(上室性)期外収縮 + 左房負荷 + 完全左脚ブロック です。

パッと見て幅の広い QRS 波が並んでいると「ギョッ!」としますが、基本に忠実に所見を拾っていけば診断はつけられるはずです。読み落としなく全ての所見を拾えましたか?