答え

  1. リズム
    幅の狭い QRS 波がやや速めにほぼ規則正しく打っているようですが、5 拍目の後と、胸部誘導に切り替わって 1 拍目と 5 拍目の後が少し間延びしています。P 波は 6~7 拍目のハッキリしている所では I、II、aVF で陽性ですから、心房の興奮は正常の洞結節から始まっていると考えられます。6 拍目の P 波からその前後をよく見ると、P 波はおよそ 13 目盛( 0.52秒)間隔でほぼ規則正しく出ているのがわかります。ということは、基本調律は 115/分の洞性頻脈。さらに各心拍の P と QRS との関係をよく見ていくと、1 拍ごとに徐々に PQ 間隔が延びていて、RR 間隔が間延びしている部分では QRS が抜け落ちている(出ていない)のがわかります。
    ということで、2度type1房室ブロックまたは 2度Wenkebach(ヴェンケバッハ)型房室ブロックと診断できます。 QRS 波から、心拍数は平均すると( 15 拍/10秒ですから) 90/ 分。
  2. P
    II 誘導で P 波の幅は 2 目盛( 0.08 秒)、高さは約 2 目盛( 0.20mV )強で、明らかな左房負荷や右房負荷はありません。
  3. PQ
    P 波が判然としない波形もありますが、四肢誘導の 5~7 拍目や、胸部誘導の 2~5 拍目を見ると 1 拍ごとに PQ 間隔が少しずつ延びていて、 2度type1房室ブロックであるのがわかります。PQ 間隔は短い所で 5 目盛半( 0.22 秒)、長い所では最大 10 目盛( 0.4 秒)あります。
  4. QRS
    QRS 波は幅が約 2 目盛( 0.08 秒)。aVR 誘導以外では aVL 誘導で Q 波から始まる波形を認めていますが、心拍によっては小さな R 波で始まっており、明らかな異常 Q 波はないと判断します。胸部誘導で R 波は V1 ~ V4 にかけて徐々に高くなっていて、S 波は V3 ~ V6 にかけて徐々に浅くなっています。V1 の S 波の深さと V5 の R 波の高さの和( SV1+RV5 )は、大きい所で 13+21=34 ( 3.4mV )で、左室肥大もなさそうです。
  5. Axis
    肢誘導で QRS 波の上向きと下向きの成分の大きさの差が最も少ないのは I と aVL 誘導ですから、おおよその電気軸は +75 度。
  6. ST-T
    明らかな ST-T 異常はなさそうです。
  7. QT
    QT 時間の延長もなさそうです。

ということで今回の心電図は、洞性頻脈 + 2度type1 (Wenkebach型) 房室ブロック という診断になります。

パッと見はとっつきにくい心電図かもしれませんが、P 波が規則正しく出ている事にさえ気が付けば、自然と診断できるはずです。最初のステップで P 波と QRS 波の関係を見極めることが大切です。