答え

  1. リズム
    幅の広いQRS波が規則正しく打っています。P波はQRS波からかなり手前に出ているようですが、各心拍ともPQ時間が一定でPとQRSは1対1で揃っており、PQ時間が延びているだけのようです。P波はI、II、aVFで陽性で正常洞調律と考えられます。心拍数は約70/分。

  2. II 誘導でのP波の幅は2目盛(0.08秒)余り、高さは約1目盛半(0.15mV)と、いずれも正常範囲内ですから左房負荷や右房負荷はありません。
  3. PQ
    PQ間隔は非常に離れていて11目盛(0.44秒)ほどあり、正常上限の0.2秒を大きく超えています。P波とQRS波が1:1で揃っていますから1度房室ブロックと診断します。
  4. QRS
    QRS波は幅が約4目盛(0.16秒)ほどで、正常上限の0.10秒よりかなり長くなっています。これは心室の興奮に時間がかかっていることを意味します。心房から伝わって来た心室興奮がこのような状態になっている場合には、まず脚ブロックを疑わなければなりません。そこでV1をみるとQRS波がrsR’ パターンを呈しており、このR’ のためにQRS幅が広くなっているのがわかります。このR’ はV1に近づいてくる興奮ですから、遅れている心室の興奮は右心室のものと判断し、完全右脚ブロックと診断します。この心電図では肢誘導のQRS波も、その後半で幅が広くなっており(特にI、II、aVLでよく判ります)、遅れてきた右室の興奮の影響がここにも出ていると考えられます。V5のR波の高さは22目盛(2.2mV)程度と正常範囲ですから左室肥大はなさそうです。
  5. Axis
    肢誘導でR波とS波の大きさの差が最も少ないのはaVRとI誘導ですが、どちらかというとaVRの方がその差が少ないことから、おおよそその電気軸は+105度よりもやや右に振っている(極端な右軸偏位)ということになり、左脚後枝ブロックがあると診断します。心室内の主たる刺激伝導系である右脚・左脚前枝・左脚後枝の3つのうち2つにブロックが生じていることから、この状態のように右脚+左脚の片方のブロックの事を2枝ブロックともよびます。

    この心電図は、QRS幅が正常上限を超えていることから心室の興奮が異常(正常の刺激伝導系を逸脱した興奮)と考えられますので、原則としてST-TやQTに関しては所見を拾っても意味がありません。ただし右脚ブロックの場合には、QRS波の主要構成成分である左室の興奮は正常ですから、左側胸部誘導(V5~6)のR波高やSTに関しては、ハッキリした異常があれば所見をとるのが一般的です。

    ということで今回の心電図は、1度房室ブロック + 完全右脚ブロック + 左脚後枝ブロック という診断になります。1度房室ブロックと完全右脚ブロックはすぐに判ったと思いますが、左脚後枝ブロックはどうでしたか?