答え
- リズム
正常の幅のQRS波が、不規則に打っています。個々のRR間隔の長さはまちまちで、期外収縮のようにQRSが時々割り込んできているというのではなく、QRSが全く不規則に打っています。また、P波が判然とせずその代わりに心電図の基線が不規則に細かく波打っています。このように、RR間隔が全く不規則(絶対不整)でP波が判然としていない心電図をみた場合には、その段階で心房細動と診断してまず間違いありません。心拍数は平均すると約120/分程度でしょうか。心房細動は心房筋が無秩序に興奮している状態で、その興奮頻度は300/分以上になると言われています。房室結節はこの高頻度の興奮を処理しきれず、適当に間引いてしか心室へ伝えきる事ができないため心拍が不規則になってしまいます。まともな心房の収縮がなく、些細な事で頻拍になりやすいため、頻拍時に心室が空打ちとなって心不全をきたす事がありますから注意が必要です。ですから、この心電図のように心拍数が100/分を超える状態が続いている場合には、同じ心房細動でも頻拍性の心房細動として注意を喚起する必要があるわけです。 - P
P波はどの誘導を見ても判然としませんから、所見としては読めません。 - PQ
P波がありませんから測定不能です。 - QRS
QRS波は幅が約2目盛(0.08秒)で、異常Q波はありません。胸部誘導でR波はV1~V4にかけて徐々に高くなっており、逆にS波はV2→V6へ進むにつれて徐々に浅くなっています。V1のS波の深さとV5のR波の高さの和(SV1+RV5)は18+14=32mm(3.2mV)で、左室肥大はありません。 - Axis
肢誘導でR波とS波の大きさの差が最も少ないのはaVL誘導ですから、おおよその電気軸は+60°です。 - ST-T
心拍が速い上に不規則ですから見難いですが、明らかなST異常はなさそうです。T波も一部の誘導で低くはなっていますが、陰性化しているものはなさそうです。 - QT
QT時間の延長もなさそうです。
ということで、今回の心電図の診断は 頻拍性心房細動 ということになります。いかがでしょうか?
最初に心電図をパッと見て「雰囲気が何となく普通じゃない」という場合にはとっつき難い印象を持ってしまいがちですが、今回の心電図では「RR間隔が絶対不整≒心房細動」ということにさえ気づけば診断は難しくありません。