答え

  1. リズム :整 / 不整、心拍数
    正常の幅のQRS波が先行するP波を伴ってほぼ規則正しく打っていますが、11拍目(胸部誘導に切り替わって4拍目)だけは少しタイミングが早く(早期性があり)、QRSの幅が広くなって変形しており、先行するP波を伴っていません。
    このように早期性を持って割り込んできている心拍の事を期外収縮と言いますが、この波形のように先行するP波を伴っていない場合には、その期外収縮の起源が心房よりも下位(房室接合部か心室)にあると考えられます。今回の波形はQRSの幅が広くなっている事から、心室が正常の刺激伝道系から逸脱した興奮をしていると考えられ、心室の異常興奮すなはち心室性期外収縮と診断します。
    その他の正常幅のQRS波に先行するP波はⅠ、Ⅱ、aVFで陽性ですから基本的には正常洞調律と考えられます。
  2. P:幅と高さ
    II 誘導でのP波の幅は2目盛(0.08秒)チョット、高さは1目盛半(0.15mV)で何れも正常範囲内で、左房負荷や右房負荷はなさそうです。
  3. PQ:PQ時間
    Q間隔は3目盛半(0.14秒)くらいで房室伝導は正常。
  4. QRS:QRS時間、形と高さ
    手順1でチェックした11拍目(胸部誘導に切り替わって4拍目)の早期性のあるQRSは、幅が3目盛(0.12秒)余りありその直前にP波がありませんから心室性期外収縮と診断します。
    それ以外のQRS波は幅が約2目盛(0.08秒)で正常。aVR以外では大きなQ波(異常Q波)を認めません。胸部誘導でR波はV1~V4にかけて徐々に高くなっており、逆にS波はV1→V6へ進むにつれて徐々に浅くなっています。V1のS波の深さとV5のR波の高さの和(SV1+RV5)は35mm(3.5mV)より小さく左室肥大もありません。
  5. Axis:電気軸
    I とaVFでQRSが上向きですから正常軸。R波とS波の大きさの差が小さい誘導はⅠとaVLですから、おおよそその電気軸は75度くらいということになります。
  6. ST-T:ST変化、陰性T波
    明らかなST異常はなさそうです。T波もaVR以外の全ての誘導で陽性です。
  7. QT:QT時間 / QTc
    II 誘導でみるとQT時間は8目盛半(0.34秒)程度。これを先行RR間隔(Bazettの式)で補正したQTcは0.41となり正常範囲内です。

ということで、この心電図は心室性期外収縮を認める以外、有意な異常所見がないという診断になります。いかがでしょうか?

今回の心電図は、日常的に心電図に接する機会のある方は「心室性期外収縮がある」という事はすぐに判ったと思います。しかし「それがなぜ心室性期外収縮なのか」とか「他には異常所見がない」という事を他人に説明しようと思うと難しいのではないでしょうか?
心電図を読影する際には真っ先に派手な所見に目が行きがちですが、基本に忠実に順を追って客観的に所見を拾って行く事で確実な診断が可能となりますから、面倒がらずに順序良く所見を見て行く癖をつけるようにしましょう。それが心電図を理解する早道になるはずです。

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