答え
- リズム
正常の幅の狭い QRS 波が先行する P 波を伴ってほぼ規則正しく打っています。P 波は I、II、aVF 誘導で陽性ですから、正常洞調律。心拍数は約 60 / 分。よくみると胸部誘導に切り替わって 1 拍目の前後の RR 間隔が、他とは多少違うようです。この心拍は、先行する P 波を伴って予定よりも早いタイミングで出ていますから、心房性（上室性）期外収縮と診断します。 - P
II 誘導で P 波の幅は 2 目盛（ 0.08 秒）あまり、高さも約 2 目盛（ 0.20mV ）です。いずれも正常範囲内ですから、左房負荷や右房負荷はありません。 - PQ
PQ 間隔は約 4 目盛（ 0.16 秒）ですから、房室伝導は正常。 - QRS
QRS 波は幅が 2 目盛（ 0.08 秒）あまりで正常範囲内。II、III、aVF および V5、V6 誘導でごく小さな Q 波を認めますが、明らかな異常 Q 波はありません。胸部誘導で、 R 波は V1 ～ V3 の順に高くなっていて、S 波は V4 ～ V6 にかけて徐々に浅くなっています。V1 の S 波の深さと V5 の R 波の高さの和（ SV1 + RV5 ）は心拍によって多少差はありますが、9 + 15 = 24 （ 2.4mV ）ですから左室肥大はありません。 - Axis
肢誘導の QRS 波で、上向きと下向きの成分の大きさの差が最も少ないのは I と aVL 誘導ですから、おおよその電気軸は＋ 75 度。 - ST-T
明らかな ST-T 異常はなさそうです。 - QT
QT 時間の延長もなさそうです。
ということで、今回の心電図は心房性（上室性）期外収縮という診断になります。
胸部誘導に切り替わって 1 拍目が早いのに気がつきましたか？ 最近の心電計のほとんどは、四肢の 6 誘導と胸部の 6 誘導を自動的に切り替えて、一連の時間の経過として記録しています。そのため、誘導が切り替わる前後は連続した心拍の記録になっており、この部分に早期性を認めた場合にも、期外収縮ととらなければなりません。
連続した時間経過の心電図記録であることは、心電図波形の最下段に記録されているマーカー（ 0.1 秒ごとの破線と 1 秒ごとの縦線）が切れ目なく続いていることで確認できます。