答え

  1. リズム
    やや幅の広い QRS 波が先行する P 波を伴って規則正しく打っています。5 拍目と 9 拍目の QRS 波は早いタイミングで出ていますから期外収縮と考えられます。この期外収縮の波形は幅が広く、先行する P 波を伴っていないことから、心室性期外収縮と診断します。1 拍目の QRS 波はその直前の波形が記録されていませんが、5拍目と全く同じ形をしていることから、同じ心室性期外収縮であると類推できます。P波が出ている部分では、その直前に大きなスパイク状の波形を認めますから、基本調律は心房ペーシングによるリズムと考えられます。P波を伴って規則正しく打っている部分の心拍数は 70 / 分。
  2. P
    II 誘導の P 波は平坦で幅も高さもハッキリしません。いずれもペーシングされた波形ですから、左房負荷や右房負荷の診断はできません。
  3. PQ
    PQ 時間は 4 目盛半( 0.18 秒)ですから、房室伝導は正常。
  4. QRS
    QRS 波は幅が 2 目盛半( 0.10 秒)あまり。aVR 誘導以外では II、III、aVF と V5、V6 誘導でごく小さな Q 波を認めますが、異常 Q 波ではありません。
    V1 の波形が RR´ 型を呈しています。この R´ 波は、心室の収縮期の後半に V1 の電極に近づいてくる興奮があることを示していますから、右室の興奮が左室の興奮より遅れているもの(右脚ブロック)と考えられます。しかし、QRS 波の幅が広くない(<0.12 秒)ことから不完全右脚ブロックと診断します。
    R 波は V1 ~ V4 の順に高くなっていて、S 波は V4 ~ V6 にかけて浅くなっています。V1 の S 波の深さと V5 の R 波の高さの和 ( SV1 + RV5 )は 6 + 23 = 29 ( 2.9mV )くらいですから、左室肥大はありません。
  5. Axis
    肢誘導の QRS 波で、上向きと下向きの成分の大きさの差が最も少ないのは aVL 誘導ですから、おおよその電気軸は + 60 度。
  6. ST-T
    不規則になっている部分以外では、明らかな ST-T の異常はなさそうです。
  7. QT
    QT の延長や短縮もなさそうです。

ということで、今回の心電図は、心室性期外収縮+心房ペーシング+不完全右脚ブロックという診断になります。

パッと見、派手な所見がいくつか重なっていると、ついついややこしそうな心電図に思えて困ってしまう人がおられますが、基本通り順に所見を拾っていけば自ずと診断がつくものです。ややこしそうに見えても、ためらわずに読んでいくようにしましょう。