答え

  1. リズム
    幅の狭い QRS 波が先行する P 波を伴ってほぼ規則正しくゆっくり打っています。P 波は I、II、aVF で陽性ですから正常洞結節からの調律と考えられ、心拍数が 40 / 分くらいと遅めですから 洞性徐脈 と診断します。
  2. P
    II 誘導で P 波の幅は 2 目盛( 0.08 秒)あまり、高さは約 1 目盛半( 0.15mV )です。何れも正常範囲内ですから左房負荷や右房負荷はありません。
  3. PQ
    PQ 時間は約 5 目盛半( 0.22 秒)と正常上限の 0.2 秒より長くなっていますから、 1 度房室ブロックと診断します。
  4. QRS
    QRS 波は幅が約 2 目盛( 0.08 秒)あまり。aVR 誘導以外ではIII、aVF と V5、V6 でごく小さな Q 波を認める程度で、明らかな異常 Q 波はありません。胸部誘導で R 波は V1 ~ V3 にかけて徐々に高くなっていて、S 波は V3 ~ V5 にかけて浅くなり、V5、 V6 では消失しています。V1 の S 波の深さと V5 の R 波の高さの和 ( SV1 + RV5 )は、波形が重なって読みにくいのですが 19 + 31 = 50 ( 5.0mV )くらいでしょうか。3.5mV を上まわっていますから左室肥大と診断します。
  5. Axis
    肢誘導の QRS 波で、上向きと下向きの成分の大きさの差が最も少ない誘導は aVL ですから、おおよその電気軸は +60 度。
  6. ST-T
    明らかな ST-T の異常はなさそうです。
  7. QTQT の延長や短縮もなさそうです。

ということで、今回の心電図は 洞性徐脈 + 1度房室ブロック + 左室肥大 という診断になります。

3 つとも正しく診断をつけることができましたか? 基本に忠実に所見を拾っていけば診断がつくはずです。

左室肥大の有無は、 一般に V1 の S 波の深さと V5 の R 波の高さの和( SV1 + RV5 )が 35mm ( 3.5mV )以上あるかどうかでチェックします。しかし、この基準を満たしているだけで ST-T 変化を伴っていない場合には、心エコーで見ると左室肥大を認めないということが少なくありません。そのため、今回のような心電図の所見は左室高電位と呼び、本当の左室肥大と区別することもあります。