答え

  1. リズム
    幅の広い QRS 波が 2 拍出た後、正常の幅の QRS 波が 3 拍、その後再び幅の広い QRS 波が 2 拍出て正常幅の QRS、胸部誘導に切り替わって、幅の広い QRS 波が 2 拍出た後、正常の幅の QRS 波が 3 拍出て、幅の広い QRS 波が 3 拍と続いています。幅の広い QRS 波と正常幅の QRS 波はそれぞれが規則的に打っているようです。
    正常の幅の狭い QRS 波は先行する P 波を伴っていて、その P 波は I、II、aVF で陽性ですから、この部分に関しては正常洞調律と考えられます。心拍数は 88 / 分くらい。
    幅の広い QRS 波は先行する P 波を伴わず、洞調律の途中に早いタイミングで割り込んできていますから、心室性期外収縮と考えられます。しかも同じ波形が 2 ~ 3 個連続して出現していますから、心室性期外収縮の 2 連発( couplets )および 3 連発( triplets )と診断します。
  2. P
    II 誘導で P 波の幅は 2 目盛( 0.08 秒)あまり、高さは約 2 目盛( 0.2mV )ですから、左房負荷や右房負荷はありません。
  3. PQ
    PQ 時間は約 4 目盛( 0.16 秒)ですから房室伝導は正常。
  4. QRS
    先行する P 波を伴っている幅の狭い(正常洞調律の) QRS 波をみていくと、その幅は約 2 目盛( 0.08 秒)。aVR 誘導以外では III でごく小さな Q 波を認める程度で、異常 Q 波はありません。胸部誘導で R 波は V1 ~ V3 にかけて徐々に高くなっていて、S 波は V3 ~ V6 にかけて徐々に浅くなっています。V1 の S 波の深さと V5 の R 波の高さの和( SV1 + RV5 )は 12 + 7 = 19 (1.9mV)ですから、左室肥大はありません。
  5. Axis
    肢誘導の幅の狭い QRS 波では、上向きと下向きの成分の大きさの差が最も少ない誘導は、III と aVL ですから、おおよその電気軸は + 45 度。
  6. ST-T幅の狭い QRS 波では、明らかな ST-T の異常はなさそうです。
  7. QT幅の狭い QRS 波では、QT の延長や短縮もなさそうです。

ということで、今回の心電図は 心室性期外収縮の 2 連発( couplets )および 3 連発(triplets)という診断になります。

心室性期外収縮は 2 連発のものをカプレッツ( couplets )、3 連発をトリプレッツ( triplets )と呼ぶことが多く、習慣的に 3 連発以上 6 連発までのものはショートラン( short run )と呼んで区別し、また 6 連発を超えて続いているものは心室頻拍(ventricular tachycardia : VT)と診断します。さらに心室頻拍は、その持続時間が 30 秒未満のものを非持続性心室頻拍と言い、30 秒以上続くものは持続性心室頻拍と診断します。