答え

  1. リズム
    正常の幅の QRS 波が先行する P 波を伴ってほぼ規則正しく打っています。P 波は I、II、aVF で陽性ですから正常洞調律。心拍数は約 90/ 分。
  2. P
    II 誘導で P 波の幅は 2 目盛( 0.08 秒)あまり、高さは 1 目盛半( 0.15mV )で、左房負荷や右房負荷はありません。
  3. PQ
    PQ 間隔は約 4 目盛( 0.16 秒)ですから、房室伝導は正常。
  4. QRS
    QRS 波は幅が 2 目盛( 0.08 秒)。V2 ~ 3 誘導では幅がやや広めで 2 目盛半( 0.10 秒)ほどありますが、異常というほどではありません。
    四肢誘導では II、III、aVF 誘導に幅が 1 目盛もある広い Q 波を認め、この Q 波は特に III と aVF で深くなっています。元々正常でも小さな Q 波を認める事がある誘導であっても、0.03 秒以上の幅の Q 波や、R 波高の 3 分の 1 以上の深さの Q 波を認めた場合には「異常 Q 波」と判断して、貫壁性の心筋梗塞の存在を疑わなければなりませんから、この心電図の II、III、aVF の Q 波は異常 Q 波と考え、下壁の心筋梗塞と診断します。
    R 波は V1 ~ V4 にかけて徐々に高くなっていて、逆に S 波は V3 ~ V6 へと進むにつれて徐々に浅くなっています。V1 の S 波の深さと V5 の R 波の高さの和( SV1 + RV5 )は、大きそうな所でも 10 + 13 = 23mm( 2.3mV )ですから、左室肥大はありません。
  5. Axis
    肢誘導で QRS 波の上向きと下向きの成分の大きさの差が最も少ないのは II 誘導ですから、おおよその電気軸は -30 度。心拍によって上向きの成分が僅かに大きめの波形( 1、2、6、7 拍目)や、逆に下向きの成分がわずかに大きめの波形( 3、4 拍目)が混在していますから、左軸偏位の所見をとるかどうかは迷うところです。
  6. ST-T
    明らかな ST 異常は認めませんが、III と aVF で T 波が陰性になっています。II 誘導の T 波も平坦になっていますから、これらの所見は恐らく下壁梗塞に伴うものと考えられます。
  7. QT
    QT 時間の延長はありません。

    ということで、今回の心電図は 下壁心筋梗塞 という診断になります。異常 Q 波を正しく読めれば診断は難しくありません。この機会に異常 Q 波が出ている誘導の組み合わせと心筋梗塞の部位診断について復習しておきましょう。