答え

  1. リズム
    幅の狭い QRS 波が先行する P 波を伴って規則正しく打っていますが、胸部誘導に切り替わって 3 拍目の QRS 波は予定より早いタイミングで出ていますから、期外収縮と考えられます。この QRS 波は幅が広く先行する P 波を伴っていませんから心室性期外収縮と診断できます。P 波は I、II、aVF で陽性ですから基本調律は正常洞調律。心拍数は約 58 / 分ほどでしょうか。
  2. P
    II 誘導で P 波の幅は 2 目盛( 0.08 秒)あまり、高さは約 1 目盛半( 0.15mV )ほどで、いずれも正常範囲内ですから左房負荷や右房負荷はありません。
  3. PQ
    PQ 間隔は約 7 目盛半( 0.30 秒)とかなり延びており、房室伝導の低下(房室ブロック)が疑われます。記録されている波形の範囲内では、期外収縮以外は P と QRS が 1:1 できっちり出ており、また PQ 間隔も一定ですから、1 度房室ブロックであることがわかります。
  4. QRS
    期外収縮以外の QRS 波は幅が約 2 目盛( 0.08 秒)と正常範囲内。aVR 誘導以外では明らかな Q 波を認めず、異常 Q 波はありません。胸部誘導で R 波は V1~V4 にかけて徐々に高くなっていて、S 波は V3~V6 にかけて徐々に浅くなっています。V1 の S 波の深さと V5 の R 波の高さの和 ( SV1 + RV5 )は 13 + 12 = 25 ( 2.5mV )ですから、左室肥大もありません。
  5. Axis
    肢誘導で QRS 波の上向きと下向きの成分の大きさの差が最も少ないのは aVL 誘導ですから、おおよその電気軸は +60 度。
  6. ST-T
    明らかな ST 低下や T 波の逆転はなさそうです。
  7. QT
    QT 時間の延長もなさそうです。

ということで今回の心電図は、心室性期外収縮+1度房室ブロック という診断になります。

今回の心電図をパッと見て、真っ先に心室性期外収縮の波形がおかしい事に気付いた人が多いと思います。普段よく見かける不整脈ですから診断にもそれほど困ることはなかったでしょう。しかしそれでホッとしてしまうと、1 度房室ブロックの所見を読み落としてしまいます。派手な所見に惑わされず、常に基本に忠実に所見を拾って診断するよう心がけましょう。