答え
- リズム
幅の狭い QRS 波が先行する P 波を伴って打っているようですが、心拍の出る間隔が必ずしも規則正しいとはいえないようです。5 拍目の前や、胸部誘導に切り替わった 1 拍目と 5 拍目の前のように RR 間隔が少し間延びしている部分がある一方で、RR 間隔が狭い所やその中間くらいの間隔の部分も見受けられます。P 波の形が 2 種類あるのがわかりますか?
四肢誘導では 1 拍目や 5 拍目のP波と、2~4 拍目や 6~8 拍目の P 波とは形が違っていて(どちらも I、II、aVF で陽性ではありますが)、それぞれ違う場所から興奮が始まっていると考えられます。また胸部誘導でも 1 拍目と 5 拍目の P 波はその他の P 波とは違う形をしていて、その直前の RR( PP )間隔が長くなっています。
四肢誘導の 2~4 拍目と 6~8 拍目の P 波は同じ形でそれぞれの RR 間隔が 14 目盛( 0.56 秒)、また胸部誘導の 2~4 拍目の P 波は同じ形で RR 間隔が 14 目盛( 0.56 秒)、いずれも心拍数に換算すると 107/ 分で、早めの脈が 3 連発で出ているようです。
以上の所見を総合すると、恐らく四肢誘導の 1 拍目と 5 拍目および胸部誘導の 1 拍目と 5 拍目の P 波が正常の洞結節由来の心拍で、それらの次の心拍が上室性(心房性)期外収縮、さらにそれらに続く早めの心拍は期外収縮の連発であると考えられます。 記録された心電図の心拍数は平均すると( 14拍/10 秒ですから) 84/ 分ですが、洞調律の速さは読めません。 - P
II 誘導で P 波は 2 種類あるようですが、大きい方( 1 拍目と 5 拍目=恐らく洞結節由来)の P 波の幅は 2 目盛( 0.08 秒)あまり、高さは約 1 目盛( 0.10mV )強ですから、左房負荷や右房負荷はなさそうです。 - PQ
PQ 間隔は約 3 目盛( 0.12 秒)ほどで正常の下限。 - QRS
QRS 波は幅が約 2 目盛( 0.08 秒)で正常範囲内。aVR 誘導以外では II、III、aVF と V6 誘導でごく小さな Q 波を認めますが、明らかな異常 Q 波はありません。胸部誘導で R 波は V1~V4 にかけて徐々に高くなっていて、S 波は V3~V6 にかけて徐々に浅くなっています。V1 の S 波の深さと V5 の R 波の高さの和( SV1 + RV5 )は 17 + 16 = 33 ( 3.3mV )ですから左室肥大はありません。 - Axis
肢誘導で QRS 波の上向きと下向きの成分の大きさの差が最も少ないのは I と aVL 誘導ですから、おおよその電気軸は + 75 度。 - ST-T
明らかな ST 低下や T 波の逆転はなさそうです。 - QT
QT 時間の延長もなさそうです。
ということで今回の心電図は、上室性(心房性)期外収縮の連発という診断になります。
リズムの診断に困った時は、心電図を少し離して俯瞰すれば見えてくる事もあります。
今回の心電図は P 波の形もさることながら、上室性(心房性)期外収縮の 3 連発が繰り返し出ているということに気づけるかどうかがポイントかもしれません。