答え
- リズム
ほぼ正常の幅の QRS 波が不規則に打っていて、QRS に先行する P 波はハッキリしません。前回にも説明したように、RR 間隔がまったく不規則(絶対不整)で P 波が判然としていない心電図をみた場合には、その段階で心房細動と診断してまず間違いありません。心拍数は約 90/分前後でしょうか。 - P
ハッキリした P 波は見当たりません。 - PQ
P 波がないので読めません。 - QRS
QRS 波は幅が約 2 目盛半( 0.10秒)で正常上限。V1 と V2 誘導で r – r’ パターンを呈しています。r’ 波の存在は、左心室の興奮よりも右心室の興奮が遅れている事(右脚ブロック)を意味します。しかし QRS の幅自体は完全右脚ブロックの時のように広がっていませんから、不完全右脚ブロックと診断します。10 拍目と 14 拍目(胸部誘導の 3 拍目と 7 拍目)は、幅が少し広めになっていますが、これは、その直前の RR 間隔が短いため右脚側の興奮が不応期を脱しきれず、一時的に完全右脚ブロックのようになったもので、病的所見とは考えません。
aVR 誘導以外では Q 波を認めません。胸部誘導で R 波は V1~V4 にかけて徐々に高くなっていて、逆に S 波は V4~V6 へと進むにつれて徐々に浅くなっています。V1 の S 波の深さと V5 の R 波の高さの和( SV1+RV5 )は 4+10=14mm( 1.4mV )、aVL の R 波の高さは 12mm( 1.2mV )ですから左室肥大もなさそうです。 - Axis
肢誘導で R 波と S 波の大きさの差が最も少ないのは II 誘導と aVR 誘導。aVR の方がより少なそうですから、おおよその電気軸は -45 度より左(極端な左軸偏位)ということで、左脚前肢ブロックと診断します。 - ST-T
明らかな ST-T 異常は認めません。 - QT
QT 時間の延長もなさそうです。
ということで、今回の心電図の診断は 心房細動 + 不完全右脚ブロック + 左脚前肢ブロック(Atrial fibrillation + Incomplete right bundle branch block + Left anterior hemiblock : AF + IRBBB + LAHB) ということになります。
前回の心電図との違いにすぐ気づきましたか? 所見がいくつも重なっている心電図では、読み落としが出てしまうことがありますから注意が必要です。