答え

  1. リズム
    正常の幅の QRS 波が先行する P 波を伴って規則正しく打っています。P 波は I、II、aVF で陽性ですから正常洞調律と考えられます。心拍数は 75 / 分弱。
  2. P
    II 誘導での P 波の幅は 2 目盛( 0.08 秒)あまり、高さは 2 目盛( 0.20mV )弱です。何れも正常範囲内ですから、左房負荷や右房負荷はなさそうです。
  3. PQ
    PQ 間隔は 3 目盛半あまり(約 0.14 秒)ですから房室伝導は正常。
  4. QRS
    QRS 波は幅が約 2 目盛( 0.08 秒)で、正常範囲内。aVR 誘導以外では、aVL と V5~6 誘導でごく小さな Q 波を認める程度で、明らかな異常 Q 波はありません。胸部誘導で R 波は V1~V3 にかけて高くなっており、S 波は V3→V6 へ進むにつれて小さくなっています。V1 の S 波の深さと V5 の R 波の高さの和( SV1 + RV5 )は 10 + 23= 33mm ( 3.3mV )で左室肥大もありません。
  5. Axis
    肢誘導で R 波と S 波の大きさの差が最も少ないのは aVL 誘導ですから、おおよその電気軸は +60 度。
  6. ST-T
    II、III、aVFおよび V4 ~ V6 誘導で ST の低下を認めます。特に II、aVF と V5~V6 では ST がほぼ水平性に低下しており、下壁~側壁にかけての心内膜下急性虚血(狭心症)を疑わなければなりません。 もちろんこの心電図 1 枚だけで狭心症と断定することはできませんが、今回の心電図は前回(第 45 回)のような左室肥大の所見は伴っていませんから、病的な状態の可能性が高いと考えられます。
  7. QT
    QT 時間の延長はなさそうです。

ということで今回の心電図の診断は 狭心症 (疑) です。

前回に比べると所見が単純でしたから診断も簡単だったのではないでしょうか。もし被験者が胸部症状(前胸部圧迫感や胸部絞扼感など)を訴えている最中の心電図がこのような波形であった場合には、すぐに狭心症の治療を開始しなければなりません。