答え

  1. リズム
    正常の幅のQRS波が不規則に打っています。RR間隔がまちまちで、QRS波が割り込んできたり抜け落ちたりしているのではなく、まったく不規則に打っています。P波は判然としておらず、心電図の基線が不規則に細かく波打っています。このように、RR間隔がまったく不規則(絶対不整)でP波が判然としていない心電図をみた場合には、その段階で心房細動と診断してまず間違いありません。心拍数は平均すると108/分 です。
    心房細動は心房が無秩序に興奮(痙攣)している状態で、その興奮の頻度は300/分以上になると言われています。房室結節はこの高頻度の興奮を心室に伝える事ができず、2~3回に1回の割で伝えるため、心拍が不規則になってしまいます。些細な事で頻拍になりやすく、また心房の収縮がないため頻拍時に心室が空打ちの状態となり心不全を来す事がありますから注意が必要です。そのため、この心電図のように心拍数が100/分以上の状態が持続している場合には、注意を喚起する意味を込めて頻拍性の心房細動と呼び、ただの心房細動とは区別します。

  2. P波はどの誘導を見ても判然としませんから、所見を拾う事はできません。
  3. PQ
    P波がありませんから計測不能です。
  4. QRS
    QRS波は幅が約2目盛(0.08秒)で、aVR以外では明らかなQ波を認めません。胸部誘導でR波はV1からV4にかけて徐々に高くなっており、S波は逆にV3からV6へ進むにつれて徐々に浅くなっています。V1のS波の深さとV5のR波の高さの和(SV1+RV5)は12+23=35mm(3.5mV)と、ギリギリですが左室肥大の基準を満たしません。aVLのR波高も3~5mmと高くありませんから左室肥大はないと判断します。
  5. Axis
    肢誘導で、R波とS波の大きさの差が最も少ないのは III とaVL誘導ですから、おおよそその電気軸は+45度です。
  6. ST-T
    aVL誘導でT波が平定化していますが、有意なST-T異常はなさそうです。
  7. QT
    明らかなQT時間の延長はありません。

    ということで、今回の心電図の診断は頻拍性心房細動ということになります。 “RR間隔が絶対不整でP波がハッキリしない” という事にさえ気付けば、診断は難しくありません。