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リズム 正常の幅のQRS波が先行するP波を伴って規則正しく打っています。P波はI、II、aVF誘導で陽性ですから正常洞調律、心拍数は75/分弱くらい。 P II 誘導のP波は、幅が2目盛り半(0.10秒)弱、高さが1目盛り(0.1mV)強で、左房負荷や右房負荷はありません。 PQ PQ間隔は約4目盛り半(0.18秒)で、房室伝導は正常範囲内。 QRS QRS波は幅が約2目盛(0.08秒)。II、III、aVF誘導で幅が1目盛近くの広いQ波を認め、このQ波はIIIとaVFでかなり深くなっています。このように、正常で小さなQ波がある事が多い誘導であっても、0.03秒以上の幅のQ波や、R波の3分の1以上の深さのQ波を認めた場合には、それを「異常Q波 」と判断し、貫壁性の心筋梗塞の存在を疑わねばなりません。この心電図ではII、III、aVF誘導に異常Q波を認めることから下壁の心筋梗塞 と診断します。 V1のS波の深さとV5のR波の高さの和(SV1+RV5)は9+7=16mm(1.6mV)、aVLのR波の高さは10mm(1mV)弱で、左室肥大はなさそうです。 Axis 肢誘導でR波とS波の大きさの差が最も少ないのは II とaVR誘導ですから、おおよそその電気軸は-45度です。-30度よりも左(マイナス)に振っており、極端な左軸偏位ということで左脚前肢ブロック と診断します。しかしこの心電図の場合は、下壁梗塞のために心室の下向きの興奮がなくなってしまった影響を拾っていると思われますから、必ずしも実際に左脚前肢が切れているというわけではありません。 ST-T STには問題なさそうですが、II、III、aVFとV6誘導のT波が陰性化しています。II、III、aVFに関しては前述の下壁梗塞による変化、V6に関しては側壁の非貫壁性(心内膜下)心筋梗塞 による変化と判断します。下壁梗塞による心筋虚血が一部側壁にまで及んだものと考えられます。 QT 明らかなQT時間の延長はなさそうです。 ということで今回の波形は 心筋梗塞 + 左脚前枝ブロック の心電図という診断になります。前回同様、異常Q波が貫壁性の梗塞、陰性T波が非貫壁性の梗塞、という事を知っていれば難しくはありません。
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