答え

  1. リズム
    ほぼ正常の幅のQRS波が、先行するP波を伴って規則正しく打っています。P波はI、II、aVFで陽性ですから洞調律と考えられます。心拍数は100/分をわずかに超えていますから(計算すると107/分)、洞性頻脈と診断できます。

  2. II 誘導でP波の幅は2目盛(0.08秒)あまり、高さも約2目盛(0.2mV)です。いづれも正常範囲内で、左房負荷や右房負荷はなさそうです。
  3. PQ
    PQ間隔は4目盛(0.16秒)くらいで房室伝導は正常。
  4. QRS
    QRS波は幅が約2目盛(0.08秒)で正常。aVR以外では明らかなQ波を認めません。胸部誘導でR波はV1~V4にかけて徐々に高くなっており、逆にS波はV2→V6へ進むにつれて徐々に浅くなっています。V1のS波の深さとV5のR波の高さの和(SV1+RV5)は11+19=30mm(3.0mV)で左室肥大もありません。
  5. Axis
    肢誘導で、R波とS波の大きさの差が最も少ないのはaVL誘導ですから、おおよそその電気軸は60度くらいです。
  6. ST-T
    II、III、aVF誘導とV3~6誘導でSTが僅かに下がっているように見えます。しかし、肢誘導では基線の揺れの影響でSTの低下が強く見えているようですし、また、胸部誘導のST低下もそれほどハッキリしたものではありませんから、この心電図だけから虚血があると診断する事はできません。
  7. QT
    QT時間の延長はなさそうです。

ということで、今回の心電図は 洞性頻脈 という診断になります。いかがでしょうか?

前回(第11回)・前々回(第10回)と、複数の所見がある心電図を見てきましたから、「何か見落としてるんじゃないか」と思いませんでしたか? そうなってくるとしめたものです。心電図の読影に慣れてくると、ついつい「あ、正常だな」と読み飛ばしてしまい所見を落としてしまう事がありますから、常に「何かあるんじゃないか」いう緊張感を持って読む事が大切です。