間接訓練、直接訓練って何?

解説:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野 戸原玄(とはら はるか)

はじめに
 摂食・嚥下障害に対する場合には、いわゆる“訓練”的な要素は不可欠となります。ここでは細かい方法論ではなく、イメージ的な進め方をご紹介したいと思います。

1.間接訓練と直接訓練
 訓練は大きく分けて間接訓練と直接訓練があります(表1)。間接訓練は食べ物を使わない特異的な訓練で、いわゆるマッサージやリラクゼーションから筋力トレーニングなどがあります。直接訓練は食べ物を使う訓練です。つまり、これから経口摂取を開始するという場合以外に、この言葉が登場することはほとんどありません。
 では、訓練をどのように適応すればよいのでしょうか。もちろん、評価を行って、たとえば舌の動きが悪ければ舌を動くように、唇の動きが悪ければ唇を動くようにトレーニングを行います。しかし、その前に障害の分類を考えておく必要があります。現在はICFという分類が用いられていますが、説明の簡便のためにICIDHを用いて説明します(図1)。これは、障害を単に“障害”として考えるのではなく、そこには階層性があるという考え方です。
機能障害は臓器レベルの障害を、能力低下は機能障害の結果として生じる個人レベルの障害を、そして社会的不利は能力低下の結果として生じる社会・環境レベルの障害を示しています。機能・形態障害から直接社会的不利にいたる矢印がありますが、たとえば何の能力障害がなくても顔面に大きなあざがあるために外出したくなくなるような場合を指します。

摂食・嚥下障害の援助

摂食・嚥下障害の援助

 では、このモデルに摂食・嚥下障害を当てはめてみましょう。たとえば脳梗塞によって舌が動かなくなった(機能障害)とします。それによりうまく食べられない(能力障害)ために、外食することができないので外出できない(社会的不利)ということが生じます。ここで考えなければならないのは、相互依存性と相対的独立性という考え方です。相互依存性というのは、お互いが関連している、という考え方です。つまり、例の中で考えると、舌の動き(機能障害)をリハビリで直すことによって、食べられるようにして(能力障害)、外出できるようにしてあげる(社会的不利)というのが、この相互依存性を生かした対応策です。
 ただし、たとえば舌の動き(機能障害)がリハビリで改善しない場合には、適切な食べ物の形態と食べ方を指導して食べられるようにすることで(能力障害)、物さえ選べば外食もできる(社会的不利)ということになれば、機能障害が直っていなくても能力傷害に対応することができています。また、舌や口唇が多少動きづらくても何でも食べられるような患者さんはたくさんいらっしゃいます。この概念を十分に考慮したうえで訓練を適用するように心がけていただきたいと思います。

2.間接訓練
 間接訓練にはたくさんの種類がありますので、それについては他の成書をご参照いただくとして、最大公約数的に表現すると、硬い部分を柔らかく、弱い部分は強くするのが間接訓練の基本です(表2)。また長い間、口やのどを使っていないのであれば、安全に使う方法をまず行うのがもうひとつの基本です。さらに、単に嚥下といっても体のいろいろな部分を使います。体幹、首、口腔周囲、口腔内の順に大きいところから、細かいところを見ていくようにします。硬いか、弱いかだけでなく、それらが能力障害を引き起こしているかと考えて訓練を決めるようにしましょう。もちろん、専門家に相談しながら行うのが懸命です。

摂食・嚥下障害の援助

3.直接訓練
 直接訓練は、いままで経口摂取していなかった患者さんが口から食べる練習を行うことですので、できればVFやVEによる評価を行ってからはじめるほうが安全です。しかし、どうしてもそのような検査を受けられない場合には、主治医の先生と相談して、このホームページの第1回目で紹介したようなスクリーニングを行うこと以外に方法がありません。その場合、誤嚥防止の手段がたくさん報告されていますので(表3)、これらを駆使して安全に飲み込める体位や食べ物が見つかってから開始するようにしましょう。

摂食・嚥下障害の援助

 訓練がうまく進むと、このような工夫がだんだん必要なくなってきます。食べる練習を繰り返すことにより、こういった代償法を減らしてゆくのが直接訓練です。代償法を変更する際のポイントは、一度に減らしたり加えたりする代償法はなるべく一つずつにすることです。一度にたくさん変更してしまうと、万が一変更後に訓練がうまくいかなかった場合、どの変更がよくなかったのかがわからなくなってしまいます。必ず評価しながら、対応を変更してゆくようにしましょう。

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