ナースができる評価ツールにはどのようなものがありますか?

解説:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野 戸原玄(とはら はるか)

はじめに
 以前の章でも紹介いたしましたが、摂食・嚥下障害に対してできることの一つは患者さんのピックアップです。これは逆にわれわれ歯科医師、または医師のほうが日常的に患者さんに接する時間が短いことから不得手な部分でもあります。患者さんがみつからなければ治療は発生しませんので、ナースによる洗い出しの役割は大変重要なものとなります。

1.評価の流れ
 まず嚥下障害がどのような原因疾患によって起こりえるのかを大まかに覚えておきましょう(表1)。脳血管障害が原因疾患となっている方がもっとも多いのですが、その他多岐にわたる原因疾患を持ちます。そのような原因疾患を持っている方が、表2に示すような何らかの症状を呈している場合には、“ちょっと怪しい”と考える習慣をつけるとよいと思います。

摂食・嚥下障害の援助
摂食・嚥下障害の援助

 もちろん嚥下障害を疑わせる症状だけでなく、意識レベル、気管切開の有無、栄養状態(BMI)、栄養摂取方法などを評価しておきます。
 その後、スクリーニングテストを行って実際の嚥下機能を評価するようにします。

2.スクリーニングテスト
1)反復唾液嚥下テスト(RSST: Repetitive Saliva Swallowing Test)
 誤嚥のスクリーニングとして、最も簡便な方法は反復唾液嚥下テスト(RSST)です(表3)。写真のように甲状軟骨を触りながら嚥下を指示します。そして30秒間時間を計って、何回飲み込みが起こったかをカウントするのがこのテストです。甲状軟骨が指を十分に乗り越えた場合のみ1回とカウントし、3回/30秒未満であれば陽性、つまり誤嚥がある可能性が高いと判断します。簡単かつ安全なよい方法なのですが認知症の程度によってはうまく指示が入らずにテストの結果が0回になってしまう場合があります。このように、“飲み込めない”のと“飲み込まない”のでは、意味合いが異なりますので同列に考えないようにして、“飲み込まない”人は別のスクリーニングテストを行ったほうがよいでしょう。

摂食・嚥下障害の援助

2)改訂水飲みテスト(Modified Water Swallowing Test)
 これは3mlの冷水を嚥下させて、嚥下運動およびそのプロフィールより咽頭期障害を評価する方法です(表4・図1)。評価の点数は5点満点で、5点が一番よく1点が一番悪い。

摂食・嚥下障害の援助
摂食・嚥下障害の援助

 口腔内に水を入れる際に咽頭に直接流れ込んでムセてしまっては実際の機能よりも評価の点数が悪くなってしまいます。これを避けるために、必ず舌の下に水を入れてから嚥下させるようにします。4点以上であれば最大で更に2回繰り返して、最も悪い場合を評点とします(図1)。うまく嚥下できた場合、繰り返しを行うことがこのテストの重要なポイントで、“たまたま”一度だけうまく飲み込めた場合を除外することができます。
 また、この評価基準の中には大きく分けて、“飲み込まない”、“呼吸切迫”、“むせ”、“湿性嗄声”という項目があります。この評価の仕方はスクリーニングのときだけではなく、実際に食事を食べているときの評価にも大きく役立ちます。
3)フードテスト(FT: Food Test)
 茶さじ一杯(約4g)のプリンを食べさせて評価するスクリーニング法で、主に口腔における食塊形成と、咽頭への送り込みを評価するために考案された方法です(表5・図1)。評価方法および評価基準はほぼMWSTと同様ですが、嚥下後に口腔内を観察してプリンが残留しているかどうかを確認する点がMWSTと異なります。
  また、スクリーニングテストは組み合わせて使用したほうが、より精度が高くなると報告されています。唾液を飲むとき、水を飲むとき、プリンを飲むときにはそれぞれ異なった動きが必要となりますので、“複数の飲み方”に対応できるほど、正常に近いというイメージで捉えると良いでしょう。

摂食・嚥下障害の援助

3.問診・スクリーニングテスト表
 上記に示した評価やスクリーニングテストは一覧の表にしておくと使いやすくなります(表6)。これはあくまでも例ですので、それぞれの施設・病院などで使いやすいように改変していただければと思います。

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