どんな援助を、何から始めればいいのでしょうか?

解説:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野 戸原玄(とはら はるか)

はじめに
 一言に摂食・嚥下障害といっても、さまざまな状態があります。まずは患者さんの状態から、どのような援助を行うべきかを考えていくとよいでしょう。
 まず患者さんが現在経口摂取を行っているのか、行っていないのかによって援助の目的を明確にします(表1)。口から食べていて「ムセ」など、なんらかの症状に苦しんでいる場合には、安全な経口摂取方法を確立することを目的とします。現在口から食べていない場合には、唾液の誤嚥を回避することができるか、もしくは食べる練習を始めることができるか、の2つが援助すべきポイントとなります。

摂食・嚥下障害の援助

1.経口摂取している患者さんの観察ポイント
 患者さんが経口摂取している場合を考えてみましょう。まずは摂食場面を観察して、問題点を見つけることが重要です。観察ポイントは、食べる姿勢、食べ物、食べ方(食事介助の仕方も含む)の3つです(表2-4)。

摂食・嚥下障害の援助
摂食・嚥下障害の援助

 

摂食・嚥下障害の援助

 表1に食べづらい姿勢の一覧を示します。良い姿勢が取れていない場合には、体のどこかに無理な力がかかります。たとえば椅子からずり下がって頭が上を向いた状態であれば、健康な人でも食べづらく、飲みづらくなってしまいます。まずは摂食時の姿勢に着目して、良肢位を確保してあげましょう。
次いで、食べ物に着目し、特定の食べ物でムセが多い、食べづらく時間がかかっているなどの症状が出現しているかどうかを観察しましょう(表2)。一般的には、硬いもの、焼き魚などぱさぱさするもの、こんにゃくのようにきざんでもばらばらになるもの、べとつきの強いもの、そして液体、は摂食・嚥下障害のある患者さんにとって食べづらい飲みづらいものであるとされています。症状を引き起こす特定の食べ物が見つかった場合には、避けるか図に示すように調整してみるとよいでしょう。その他、食事中に明らかにむせている場合には誤嚥が疑われますが、不顕性誤嚥と呼ばれる状態の患者さんでは咳がでないことがあります。このようなときには、湿性嗄声(がらがら声)が誤嚥を見つけるための大きな指標となります。うまく食べられているかよく判断がつかないときには、食事中に声を出して嗄声の有無を確認してください。
その他、食べ方、食べさせ方を観察します。食べるペースや、食事介助のペースが早いときにはペースを遅くするよう声かけを行ったり、スプーンを小さくして一口の量を物理的に減らしてしまうのも効果的です。また食事中に気が散って、隣の方の食事に手を出したり、テレビを見続けてしまうような場合には、なるべく静かな環境をセッティングしましょう。さらに、食事はもちろん楽しみの一つでもありますので、食器や盛り付けの仕方を工夫してなるべくおいしそうに見せるのもポイントです。
以上を行っても改善が認められない場合には、専門的な検査をすることが勧められます。専門的な検査とは、VF(嚥下造影)またはVE(嚥下ビデオ内視鏡)をさします。どうしてもそのような環境が整わない場合には、お近くの専門家に相談してみてください。

2.経口摂取していない患者さんの観察ポイント
 今度は、現在口から食べていない場合を想定します。唾液の誤嚥がひっきりなしに起こり、常に吸引が必要な場合には、嚥下訓練というよりも呼吸訓練の適応であると考えられます。よって、ここではその説明は割愛いたします。
 現在口から食べていなくても、食べる練習を開始することができる場合があります。まずは表5に示すチェック項目に引っかかるかどうかを観察してみてください。これら全てに問題が認められなければ、試験的な経口摂取を行ってみる価値があると思います。試験的な経口摂取の方法には、改訂水飲みテスト(表6)、食物テスト(表7)の方法を参考にしてください。もちろん、ナースが単独で行うのではなく、主治医の先生の許可の下で行うようにしてください。これらいずれにも問題が認められなければ、直接訓練(栄養としてではなく、食べる練習を少しずつ開始)ができる可能性が高いです。しかし、いずれかに問題が認められる場合、もしくは表5に示すチェック項目で悪い部分がある場合には、専門的な検査を行うことが勧められます。

摂食・嚥下障害の援助
摂食・嚥下障害の援助
摂食・嚥下障害の援助

 次回は、「ナースのかかわる分野と援助の種類とチームワーク」というテーマで具体的な援助の方法について考えていきます。

この連載の内容の無断転載を禁じます。