混合静脈血酸素飽和度

解説:西新井ハートセンター病院 白坂友美(感染管理認定看護師)

 今回は、スワン・ガンツカテーテルで測定される混合静脈血酸素飽和度についてお話します。

1.混合静脈血酸素飽和度とは・・・
 スワン・ガンツカテーテルの先端が挿入されている「肺動脈」の酸素飽和度を測定します。混合静脈血酸素飽和度には、肺でのガス交換、心拍出量、ヘモグロビン値、細胞組織での酸素消費が関与し、酸素の需要と供給のバランスの把握ができます。循環管理の目的である「各組織へ必要な血液(酸素)を供給する」という点で、優れた指標として臨床現場では良く活用されています。

2.指標
 混合静脈血酸素飽和度は、「供給もとである肺」「運搬もとである心臓とヘモグロビン」「需要もとである細胞組織」が関与してきます。
酸素は、《肺でのガス交換》 ⇒ 《ヘモグロビンに結合し心臓から全身へ運搬》 ⇒ 《細胞組織で酸素消費》 ⇒ 使用されなかった酸素は心臓へ戻ってきます。混合静脈血酸素飽和度値の異常は、この経路のどこかに異常がある事になります(図1)。

混合静脈血酸素飽和度

3.混合静脈血酸素飽和度値
 混合静脈血酸素飽和度は、以下の式で求められます(この式からも、肺、心臓、ヘモグロビン、細胞組織の関与がわかりますよね)。
 混合静脈血酸素飽和度=動脈血酸素飽和度-酸素消費量×10/(Hb×1.39×CO)

  1. 動脈血酸素飽和度 ⇒ 肺でのガス交換
  2. 酸素消費量    ⇒ 細胞組織での酸素の需要量
  3. Hb・CO     ⇒ 酸素運搬機能

 通常、動脈血酸素飽和度は95~100%、細胞組織での酸素消費量は22~30%、消費されずに心臓へ戻ってくる酸素飽和度は60~80%となります(図2)。

混合静脈血酸素飽和度

4.混合静脈血酸素飽和度の異常
 混合静脈血酸素飽和度の異常時は、肺(酸素供給)、心臓・ヘモグロビン(運搬機能)、細胞組織(酸素需要)のどれかに異常があると考えます(図3)。

混合静脈血酸素飽和度

1)肺
(1)混合静脈血酸素飽和度の低下

 肺でのガス交換が低下すると、細胞組織へ供給する動脈血酸素飽和度が低下します。もともとの動脈血酸素飽和度が低いため、細胞組織での酸素消費のあとに戻ってくる混合静脈血酸素飽和度も低くなるわけです。このような場合は、ガス交換を障害している原因を探しガス交換の改善を図ります。原因として、無気肺、気胸、胸水貯留などがあげられます。無気肺では、看護師による予防・改善のケアは重要となりますよね。
(2)混合静脈血酸素飽和度の上昇
 混合静脈血酸素飽和度を測定しているスワン・ガンツカテーテルの先端が、肺動脈よりも先に深く進入していると(wedge)、そこはガス交換をしている肺胞付近となります。酸素化された血液も測定してしまうため、混合静脈血酸素飽和度が上昇します。スワン・ガンツカテーテルが挿入されている患者では、カテーテルの先端が肺動脈にあるかどうかのモニタによる波形観察が常時必要となります。

2)心臓
○混合静脈血酸素飽和度の低下
 肺でのガス交換に異常がなくても、全身へ送り出す酸素の量が少ないと心臓へ戻ってくる混合静脈血酸素飽和度も低下します。全身へ送り出す臓器は「心臓」です。心拍出量を常に観察する事が大切です。

3)ヘモグロビン
○混合静脈血酸素飽和度の低下
 ヘモグロビン値が低いと運搬される酸素の量が低下します。そのため、心臓へ戻ってくる混合静脈血酸素飽和度も低下します。心臓はヘモグロビン値が低いと、細胞組織が求める酸素(血液)をたくさん拍出しようと頑張り、心臓への負担となります。心不全の患者では悪循環のもととなりますから、検査データで必ずチェックしましょう。

4)細胞組織
(1)混合静脈血酸素飽和度の低下
 発熱や呼吸筋の過剰使用などは、組織での酸素消費量が増加します。酸素供給(肺)、酸素運搬(心臓、ヘモグロビン)がきちんとできていても、酸素を使用する量が増加すれば、心臓へ戻ってくる混合静脈血酸素飽和度は低下します。
(2)混合静脈血酸素飽和度の上昇
 低体温などで組織の酸素消費量が低下すると、混合静脈血酸素飽和度は上昇します。

5)その他
 上記の他に、心筋梗塞後によく見られるのが、心室中隔穿孔による混合静脈血酸素飽和度の上昇です。酸素化された血液が、左室から穿孔部を通って右心室に入り、肺動脈に至るため、混合静脈血酸素飽和度が上昇します。
 また、何らかの理由でシャントが増加すると、組織で酸素が消費される事なく動脈血から静脈血へ戻ってしまうために、混合静脈血酸素飽和度が上昇します。
混合静脈血酸素飽和度の異常値の原因を考える時には、関与する臓器の削除法を行うとわかりやすいと思います。
 例えば、(1)血液ガスで酸素化を評価、(2)スワン・ガンツカテーテルで心拍出量を評価、(3)血液データでヘモグロビンを評価、(4)体温・皮膚の冷感や色調などで末梢組織の循環を評価し、異常のないものを削除していきます。そして原因と考えられる臓器の改善を図る治療やケアを行っていきます。その際、改善する治療やケアを行い、本当に混合静脈血酸素飽和度が改善しているかどうか?の評価をきちんと行う事を忘れないようにしましょう。

5.症例
1)手術後、気管挿管中の患者の混合静脈血酸素飽和度が「50%」へ低下。
血行動態データ

ドレーン出血・・増加なし Hb:10.9
血液ガス・・・・・人工呼吸器同設定でPO2:98 mmHg ⇒ 60 mmHgへと低下
体温・・・・・・・中枢温 37.9℃ 腋窩温 37.2℃
末梢循環・・・・・冷感なし
●酸素供給のガス交換には問題あり。その他の酸素運搬(心拍出量、ヘモグロビン)、酸素需要(細胞組織)には問題なしと判断し、肺音を聴取すると右下肺聴取できず。胸部レントゲン撮影を施行し、右肺の気胸確認。右胸腔にトロッカー挿入し脱気後、酸素化改善し、混合静脈血酸素飽和度も72%へと改善した。

ちょっと余談
 最近では低侵襲のフロートラックセンサー・ビジレオモニターが活躍しています。動脈血ラインと中心静脈ラインに接続するだけで、心拍出量と混合静脈血酸素飽和度が表示されますが、スワン・ガンツカテーテルとの測定部位の違いはきちんと理解しておきましょう。スワン・ガンツカテーテルは、右心室から拍出される心拍出量と肺動脈での混合静脈血酸素飽和度を測定しますが、フロートラックセンサーでは、動脈圧をもとに算出された心拍出量と中心静脈での混合静脈血酸素飽和度が測定されます。そのため、フロートラックセンサーでは動脈圧波形・心拍数を正しく測定できないと、正確な心拍出量が算出されません。また、スワン・ガンツカテーテルよりも得られる情報量が少なくなります。患者の重症度に合わせた選択が必要となります。
  当センターでは、重症度の高い患者ではスワン・ガンツカテーテル、それほど重症度が高くない患者ではフロートラックセンサーという具合に使いわけています。

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