心収縮力

解説:西新井ハートセンター病院 白坂友美(感染管理認定看護師)

 今回は、心拍出量を決定する因子である「心収縮力」についてお話します。

1.心収縮力とは・・・
 心収縮力とは、文字通り「心臓の筋肉の収縮する力」の事です。今までお話してきた「前負荷」「後負荷」が心臓の収縮力に影響を与えますが、その他に交感神経および迷走神経も関与してきます。
 
 頚動脈、大動脈弓部、右房入口には圧受容器があり、頚動脈、大動脈弓部には化学受容器があります。圧受容体は血圧の変化を感知し、化学受容体は低酸素・高二酸化炭素・pHの変化を感知します。ここからの情報をもとに、交感神経が興奮するとアドレナリンが分泌し、血管の収縮(α作用)や心臓の収縮力と心拍数(β1作用)を増加させ、迷走神経が興奮するとアセチルコリンが分泌され、主に刺激伝導系を刺激し心拍数を低下させると共に軽度心収縮力を抑制し血圧を低下させます(図1)。 

心収縮力

2.心収縮力の指標
 臨床現場では心収縮力は血圧を指標としていることかと思います。その他に、集中治療室などではスワンガンツカテーテルが留置され、機械が計算して「心拍出量」「心係数」として表示されていることもあります。
スワンガンツカテーテルを用いた血行動態の評価と治療については、次回お話します。

3.心収縮力の増加
 心筋の収縮・拡張は、心筋へのCa2+の流入が必須となります。心収縮力を高めるためには、以下の薬剤の投与を考えます。
(1)カテコールアミン
 カテコールアミンはβ1受容体へ結合し、cAMPが増加する事でCaチャンネルが活性化し、細胞内へCa2+が流入し心筋が収縮します。カテコールアミンには図2のような特徴がありますから、作用を考えて使用します。

心収縮力

(2)PDEⅢ阻害薬
 cAMPの分解酵素であるPDE(ホスホジエステラーゼ)を阻害する事により、強心作用が発揮されます。また血管拡張作用もあり、後負荷を取りながら心拍出量の増加をさせます。
(3)ジギタリス
 ジギタリスはNa+-K+ATPaseを阻害させ、細胞内のNa+を高めることでNa+-Ca2+交換チャンネルが低下し、細胞内のCa2+が高まり強心作用が発揮されます。

 その他、心筋の収縮を抑制するような原因の除去も重要です。βブロッカーやCa拮抗薬、抗不整脈薬などを使用している場合は減量や中止が必要となるかも知れません。また、アシドーシスはCa2+の流入を阻害し、低酸素血症は心筋障害を悪化させるため、まずはそのような原因の除去・治療が必要となる事も忘れてはいけません。

 今回は「薬剤の話しばかり・・・」とがっかりしている方もおられるかもしれません。しかし、患者の身体情報を正確に得るためには薬剤の知識(作用・副作用)も大切な項目です。次回は、スワンガンツカテーテルについてお話します。

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