心拍出量の決定因子

解説:西新井ハートセンター病院 白坂友美(感染管理認定看護師)

 全身の循環を維持するために欠かす事のできないのが「心臓」です。心臓は様々な要素によって循環を維持しようと日々努めています。循環を理解するためには、その「要素」をしっかりと理解する事が重要です。

1.心拍出量の決定因子
(1)心拍数(HR)
 心拍出量は、「1分間の心拍出量(CO)=1回の拍出量(SV)×1分間の心拍数(HR)」と表す事ができます。そしてさらに1回の拍出量(SV)は、心臓の収縮力・心臓へ戻ってくる循環血液量(前負荷)・心臓から出す時の抵抗(後負荷)が大きく関係し、心拍出量を一定に維持しようと調節されています(図1)。 

心拍出量の決定因子

1)1回の拍出量
 1回の拍出量は、心臓に戻ってくる循環血液量(前負荷)と心臓から血液を出す時の抵抗(後負荷)、心臓の収縮力で決定されます。
 (1)前負荷(心臓に戻ってくる血液量)
 心臓は血液が流入して心筋壁が引き伸ばされればされるほど、強く収縮しようとします(フランク・スターリングの法則)(図2)。

心拍出量の決定因子

  1分間の心拍出量が以下のようにコントロールされていた患者がいたとします。
「1分間の心拍出量:5600ml=1回の拍出量:70ml×1分間の心拍数:80回」
 脱水の場合、心臓に戻ってくる血液量が減少します。1回の拍出量が50mlに減ってしまった場合は、心臓は1分間の心拍出量:5600mlを維持しようと、1分間の心拍数を112回に増やそうとします(「1分間の心拍出量:5600ml=1回の拍出量:50ml×1分間の心拍数:112回」)。ですから、脱水傾向の患者は血圧が低めとなり頻脈傾向となるわけです。
 逆に脱水で頻脈だった場合は、輸液をすると頻脈がおさまります。
「1分間の心拍出量:5600ml=1回の拍出量:100ml×1分間の心拍数:56回」
 術後の管理で、輸液をした後に心拍数が100回以上から80、70、60回と下がってくる事をよく経験します。

(2)後負荷(心臓から血液を出す時の抵抗)
 後負荷は、心臓が収縮して血液を全身に拍出しようとする時に受ける抵抗です。
 心臓が血液を打ち出す先は血管です。その血管が何らかの抵抗を持っていると心臓は血液を拍出しにくくなり、さらにそれに打ち勝つために心臓は強く収縮しなくてはならなくなります。抵抗となるものは血管径や血管の弾力性、血液の粘稠度などがあります(図3)。

心拍出量の決定因子

  後負荷が大きければ大きいほど、心臓は強く収縮しようとし仕事量が増大するうえに、1回の拍出量が減少します。そして、1分間の心拍出量の維持のため心拍数が増加します。

(3)収縮力
 心臓が収縮する力の事です。虚血性心疾患や弁膜症などで収縮機能が低下しますが、その他にも低体温、迷走神経、低酸素血症などでも低下します。

2)心拍数
 1分間の心拍数です。
 心臓血管術後に心拍出量を上げようと人工ペースメーカーの設定を上げる事もあります。「1分間の心拍出量:2500ml=1回の拍出量:50ml×1分間の心拍数:50回」ならば、人工ペースメーカー(心房ペーシング)を80回に設定し、「1分間の心拍出量:4000ml=1回の拍出量:50ml×1分間の心拍数:80回」にして、心拍出量を増やし循環管理をします。
 しかしその場合には、心房ペーシングか心室ペーシングかで心拍数の設定は大きく変わります。心房ペーシングは心房収縮がありますから1回の拍出量は変わりませんが、心室ペーシングは心房収縮が消失しますから、1回の拍出量は減少します。心室ペーシングで心拍出量を上げる場合は、心房ペーシング以上の設定数が必要となるかもしれません(「1分間の心拍出量:4000ml=1回の拍出量:40ml×1分間の心拍数:100回」)。
 また、あまり心拍数の設定を早くしてしまうと(頻脈)、心臓の拡張時間が短くなり心室への血液充満が減少してしまい、逆に心拍出量が不変か低下させてしまう危険性もあります。臨床現場でじっと医師を見ていると、一番良い拍出量を探りながら心拍数を決定している姿を見かける事があると思います。

 以上が、心拍出量を決定する因子です(前負荷・後負荷・心収縮力・心拍数)。この4つの因子が微妙にコントロールされ、心拍出量を維持している事を覚えましょう。
 さて、次回はそれぞれの因子を詳細に述べ、治療方法(コントロール)・看護に必要なフィジカルアセスメントについてご説明したいと思います。

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