大動脈内バルーンポンピング(Intra Aortic Balloon Pumping) その2


解説:西新井ハートセンター病院 白坂友美(感染管理認定看護師)

 IABP を装着していると「冠血流の確保」「心筋への酸素供給増加」「心筋酸素消費量低下」などの効果が得られ、非装着時に比べ「安心」という心のゆとりが看護師に出てきます。しかし、装着による合併症も念頭に入れて観察・看護をしていかなくてはなりません。
 今回は、大動脈内バルーンポンピング(IABP)装着中の看護についてお話します。

1.IABP による合併症と対策
 合併症は、表1のようにまとめる事ができます。

大動脈内バルーンポンピング その2

1)バルーンの破裂
 石灰化のある大動脈壁とバルーンが擦れや、血管の蛇行によるバルーンの屈曲部の疲労などにより起こります。バルーン収縮時の陰圧により血液がバルーン内に入り込み、体外チューブ内に血液が認められます。バルーン内部に血液が入り込むと血塊となり、IABP 抜去時に引き抜けなくなり、外科的抜去が必要となるため早期の医師への報告が必要です。

2)下肢の虚血
 下肢の虚血により皮膚色が不良やチアノーゼ、冷感、下肢のしびれや痛みが出現します。IABP 挿入前に足背動脈と後脛骨動脈の拍動部位に印を付け、拍動の確認をしやすくしておくと良いでしょう。下肢が虚血となると筋肉細胞の崩壊によりCK (酵素)が上昇します。血液データの確認も大切です。

3)出血
 異物が血管内で血液と接触する事で血栓が形成しやすくなっているため、ヘパリンによる抗凝固療法を行います。また、バルーンの拡張・収縮による血球が破壊により、血小板が減少しやくなっています。そのため、出血傾向となりやすい状態となります。IABP挿入部位の外出血の他、内出血(後腹膜出血は発見が遅れやすく大量に出血できるため、血圧低下で発見される事があります)などに注意が必要です。また、血小板値、ヘモグロビン値やACT値に注意を払いましょう。

4)感染
 IABP 挿入部位の発赤、排膿の他、発熱、白血球値、CRP などの全身の感染兆候に注意が必要です。もちろん、感染兆候があればIABP を抜去するか、反対側からの新しいカテーテルの入れ換えが必要となります。

5)血栓・塞栓
 異物の挿入により血栓が形成しやすくなっていると述べました。その血栓が末梢へ遊離すると末梢循環障害を起こし、臓器へ遊離するとその部位の臓器障害を引き起こします。ACT 値のコントロールと共に、末梢循環の確認(図1)、臓器の状態を検査データや臨床所見などで確認する必要があります。


大動脈内バルーンポンピング その2

6)褥創
 IABP を必要としている患者は、多くが循環不全を呈しています。その様な全身状態でベッド上安静を強いられるため、褥創が非常に発生しやすくなります。血行動態やIABP 挿入部位の出血、カテーテルが引き抜けないように体位変換を行う事は重要です。

7)腓骨神経麻痺
 腓骨神経麻痺は、下肢の外旋による腓骨頭の圧迫により発生します。背屈障害や感覚障害を来たし、いざ社会復帰をしようとする時の妨げとなります。急性期の段階から患者の社会復帰を常に念頭におき、「下肢を適度に屈曲」「膝蓋外側を圧迫しない」などに心がける事は急性期に関わる看護師の役割の一つです(図2)。

大動脈内バルーンポンピング その2

2.IABP 装着患者の精神的看護
 患者は血行動態の不安定に加え、慣れない様々な音やベッド上安静を強いられ、身体的苦痛や精神的苦痛を伴います。中には、不穏状態に陥る患者もいます。その様な患者の精神的ケアは重要な看護です。時間ごとの体位変換や洗髪や手洗いなどの保清を取り入れたり、状態によってはラジオやテレビなどによる気分転換を図る事が大切です。夜間の睡眠を確保できるように環境を整えたりもしますが、血行動態を増悪させてしまうような精神的興奮などには鎮静剤なども必要となる事もあります。

3.IABP 装着患者へ提供する看護技術
 IABP が装着されていると、血行動態の変動、IABP カテーテル挿入部の出血、カテーテルの抜去など防止のため、とかく看護師は看護ケアを提供する事をためらう傾向にあります。
しかし、上記に上げた合併症予防や身体的・精神的看護のためにも、できる限り日頃の生活に近つける事は重要な看護です。安全に看護ケアを提供するためには、どのように工夫すれば良いのかを考える事は急性期看護師の役目です。
1)体位変換
 カテーテルを目視できるように掛け物を外し、看護師二人以上で行う。また、急激な体位変換は血行動態への変動にもつながるため、ゆっくりとした動作で行う(力任せに行わない)。過度な屈曲ができないのは挿入部だけです。他の関節は良肢位を保ち、適度に屈曲させる(図3)。

大動脈内バルーンポンピング その2

2)清拭
 短時間で安全にできるように、前もってしっかりと準備をし(どのように準備をすれば短時間でできるのか常に考える)、他の看護師と打ち合わせ後手際良く行う。

3)その他
 当センターの看護師は、時々以下の様に工夫をしています。
  手浴 ⇒ ビニール袋にお湯を入れ、その中に手を浸ける。
  洗髪 ⇒ オムツを頭に敷き、洗髪を施行。
 急性期患者は、基本的な生活(欲求)を自分自身で維持できなくなります。急性期看護は、とかく血行動態の監視にのみに偏りやすくなりますが、血行動態の把握に努め監視しながら、患者の基本的な生活を看護師が代わりに提供する事が大切です。そのためには、「どのように工夫すれば良いのか」を常に自問自答しながら看護を考えていく事が必要だと感じます。「そんな看護スタッフと一緒に仕事がしたいな~」と常日頃考えている私です。

この連載の内容の無断転載を禁じます。